私達の課は、外勤が出払ってしまう日中は私と彼女の二人だけになる。
受話器越しに嫌でも相手の大声(胴間声というか野良声)が耳に入ってくる。

彼女は小声で返答したり、折り返し電話にしようとしするけど、
デカイ声でまくし立てるので処置無しだった。 

彼女は思う所があって携帯を着拒してから会社に電話が入ると言ってた。 

問わず語りに聞いたのが、
高校の学費の返却分と家を離れる「我が儘料」を、
卒業以来５年間ずっと毎月実家に送金していた事。 
農協の借金を払うのに、彼女の稼ぎを当てにされている事。 
長兄は家計を握る母親から小遣いを貰って遊んでいる事。
次兄は家を嫌って十代で出奔している事など。 

その後私は予定通り転職して、しばらく後に彼女も退職した。 
田舎の両親や兄が彼女を探して会社に凸して暴れたが、
行き先は誰も知らないと皆で突っぱねたらしい。 

直属上司と人事担当、それに私も何かを聞いてたような気がするけど、多分記憶違いだろう。 

今は次兄さんと再会して、遠くの異国で幸せに暮らしていたら良いなあと、関係した一同は夢想している。私達は何も知らないから、これはだったら良いなの夢物語だよ～。 

私達の課は、外勤が出払ってしまう日中は私と彼女の二人だけになる。
受話器越しに嫌でも相手の大声(胴間声というか野良声)が耳に入ってくる。