文章苦手なので、わかりにくいところがあったらスマソ
俺は体質的に酒が飲めない。
親父と兄貴も飲めないし、父方の親戚も下戸ぞろい。
母方はそうでもないらしいがあまり付き合いがないし、母も滅多に飲まないから酒には縁のない一家として暮らしてきた。
結婚の話が出るようになった。
彼女の親に挨拶に行く際、彼女には「田舎の人だからお祝いごとにはお酒が付き物ってすぐ言いだすけど両親には俺男くんがお酒飲めないことは言っておいた。なるべく両親の隣を離れないで」と言われた。
彼女の実家は、同じ県内だけど鈍行で一時間以上かかる土地。
家が平屋で広くていかにも由緒ありげ。蔵もあった。
畑も広々。
俺が車からおりただけで近所の人がわらわら見に来なすった。
彼女と彼女母は、もてなしの用意で台所に行ってしまった。
俺の横に彼女父さんがいる間は良かったのだが人が増えるにつれて引き離され、いつのまにか俺は
「飲め飲め」
「飲め飲め」
と周囲の全員に迫られていた。
「飲めないんですよ」とヘラヘラ言ってみたが
「そんなこっちゃ本家の跡取りにはなれんぞ!」と背中をどやされて
勝手におちょこに酒をつがれる。
そのうち「俺の酒が飲めないのか状態」になってきたので
仕方なく飲まずに口だけ付けるフリをした。
でも、その直後からおかしい。
唇をちょっと酒につけただけなのに、その唇が熱い。腫れぼったい。二の腕の内側や、腹や、喉がかゆい。
慌ててトイレに立って鏡を見たら、唇がはれ上がって、体に湿疹が出てた。
その後病院で言われたところによると、俺はもともとの下戸体質にくわえ知らない間にアルコールアレルギーになっていたらしい。
飲まずに唇に付けただけで良かった。もし飲んでたら食道の中までびっしり湿疹ができてただろうと言われ、ぞっとした。
彼女には「目を離してごめん」と謝られたが別に彼女子は悪くないし、とにかく二度と酒には近づくまいと重々誓った。
結婚話は着々と進んで、結納の日になった。
だがふたたび彼女の実家に行ってみると、そこでは俺の評判は地に落ちていた。
俺がちょっと酒を口につけただけで救急車で運ばれた一件が「本家を継ぐにはあまりにだらしない」と見なされたらしい。
前回もやたら俺にからんできた彼女の同級生の男が中心になって触れまわったらしく(どうも彼女に気があったようだ)今回もそいつが中心グループの一員になってグチャグチャ文句をつけてきた。
ほんと、こういうやつらどういう頭の構造してるんだ?
俺ばかりか親父までだらしない腑抜け野郎のような扱いをされていいかげんブチギレそうだったところに、救いの女神がやって来た。
それは彼女の妹(以下、妹子)。
妹子はカニ、エビ、タケノコ、そばのアレルギーがあって、この田舎の老人たちによって何度も被害にあってきたらしい。
最近はアレルギーがポピュラーな存在になったけど子供のころは田舎ゆえアレルギーに理解ある人がほとんどいなくてしかも冠婚葬祭によくあるメニューの食材だったことが災いして、残すと
「なぜ食べない」
「なぜ残す」
「贅沢だ。わがままだ」
「ウチを祝う気がないのか」
と集中砲火を浴びていたらしい。
俺や親父に「飲め飲め」と差し出される酒を、無言で次々奪い取って飲んでいく妹子ちゃん。最初はやんややんやだった老人どもも、妹子ちゃんの鬼気迫る様子に次第に無言になっていった。
途中からは、妹子だけに任せておけんと俺の彼女も参加。なぜか発奮したらしいうちのオカンも親父を守らねばと参加。
妹子ちゃん、彼女、うちの母の三人の女の働きによって酒はほとんど飲み尽くされた。
彼女と母は普段飲まないが、けっして飲めないわけじゃない。
むしろ強い。
そこにザルに近い酒豪の妹子ちゃんが加わり、みるみるなくなっていく酒に、座敷の老人と青年会連中はポカーン。
なおも俺にからもうとする彼女の同級生男を
「あたしより酒弱いくせに、えらそうに」
「他人に飲め飲め言うわりに、あんたちっとも飲んでないよね。すぐ吐くからでしょ。あんたこそだらしない」とせせら笑う妹子ちゃんに報いるため、俺はその間、青年会に持ち寄られたエビとカニをむさぼり食っていた。
彼女両親は娘たちの決死のふるまいを見て思うところあったらしく
「子供のころのお前たちを守れなくてすまなかった」
「もうあんな思いはさせない」
と反省して約束したそうな。
同級生男がその後彼女に告白してフラれる、同じく青年団所属の男が妹子に告白してこれもフラれる、などのゴタゴタを経てやっと結婚できそうな気配なので投下。
彼女さんもご両親も彼女さんのご家族もみんなお幸せに
アレルギーの怖さを理解出来ない勉強不足の馬鹿と老害は氏ねばいい
そんでおめ!
◇修羅場◇part101
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