大丈夫、と無理に笑ってくれる嫁さん、ありがとう。
もう二度とお袋とお前が会うことはないよ。

嫁さんが大事にしてたのは、最近亡くなった大親友が海外で買ってきたもので、赤い缶に絵柄のついた、嫁さんの好みのものだった。 

リーフの方が好きなんだが、これはパックなんだ。
でも缶が好きそうだから…って持ってきてくれてた。 

その友人が急死した後、とって置きたいけど、飲んだほうが喜ぶかな、紅茶は長くて３年なのよね･･･って、濃くなったそのパックの紅茶見つめながら呟いてたのを覚えてる。 

お袋には、これ（紅茶全般）は嫁さんのだから手を出すな、とずっと言っていたのに、 選りにも選ってその大事な紅茶缶を持って帰ってたんだ。 

無くなったのに気がついた嫁さんは大混乱して、家中ひっくり返して探してた。 
子供達も触ると母親が泣くのを知ってるから触らないし。 
家にはない、どうしよう･･･って嫁さん呆然として、 
自分の監督が悪かったんだ･･･と諦めようとしてた。 

したら、俺の実家にあったんだよ。 
「ちょっと寄ったら誰もいなくて、可愛かったから貰ってきちゃった」だと。 

もう情けなくて、嫁さんの顔をまともに見れんかった。 
「それは貰ったとは言わない、盗んだと言うんだ、恥を知れ」と言っても
「息子の家のものは私のもの」的なことしか言わない。 

フォローもできない。する気も起きない。 
嫁さんは「探し物が見つかって良かった」とだけ言った。 
それだけで帰ろうとする嫁さんに「狭量な嫁だ」とまで言いやがった。 

嫁さんとお袋、子供たちは接触させないで、俺だけ冠婚葬祭だけ顔を出すよ。 
子供たちにしても、毒にしかならん祖母だからな。

大丈夫、と無理に笑ってくれる嫁さん、ありがとう。
もう二度とお袋とお前が会うことはないよ。