その夏、海に行った。
肌身離さず身に付けていたチェーンだけど、
浜辺で連れに「鎖型に日焼けが残るよ」と言われ、
「それもそうだ」とビーチバッグにしまった。

それなのに、帰りにチェーンは消えていた。 
「誰かの荷物に紛れ込んでいないかな？」
とは聞いたけど、誰も知らないと言うことだった。 

帰りの車中で、
「厄を誰かが貰ってくれたということさ」
と旦那に慰められながら帰宅して間もなく、 
同行仲間のカップル組が事故に遭った一報が入った。 

旦那とすぐ病院に向かうと、
飲酒していたために助手席にいた彼氏は軽傷で、
運転していた彼女は重傷。 

彼氏は旦那の友人で、
彼女さんはその日が初対面だったのだけど、
彼氏から黙ってチェーンを手渡された。 

彼氏が言うには、親御さんに連絡を取るため、
彼女さんのバッグを探っていたら出てきたのだそう。 
私も黙って受け取った。 
そして彼女さんは片足を膝から切断した。 

チェーンは母と相談して、
厄除けした神社に奉納したが、
おかげさまで私に大厄は来なかった。 

旦那の厄にも、盗んでもらえそうな「何か」を贈りたいと、母共々思っている。

何かを盗まれたら、厄や悪運を盗まれたという考えもあるのか、考えた事もなかった。 
去年財布盗まれたけど、厄も持っていってくれたのかしら… 

その夏、海に行った。
肌身離さず身に付けていたチェーンだけど、
浜辺で連れに「鎖型に日焼けが残るよ」と言われ、
「それもそうだ」とビーチバッグにしまった。