◇修羅場◇part68
登場人物
私子
K助…彼氏
Y太…大学の同級生。私子・K助の友達
K助と私は、大学生のころからの付き合いで、交際4年目。
K助は在学当時からずっと私にプロポーズをしてくれていました。
もともとの性格の違いから喧嘩も多かったけど、K助はいつでも私を好きでいてくれました。本当に幸せな4年間でした。
そんなこんなでその年のクリスマス、K助はいつものように私にプロポーズをしました。
「いつものように」というのは、K助は私と付き合い出してからずっと、お互いの誕生日やクリスマスなどのイベントがある日には、決まって「結婚しような」という言葉を添えてくれていたから。その年のクリスマスも同じでした。
703: 702 2009/01/16(金) 16:30:12 ID:l6dqWWzlO
「もう聞き飽きたと思うけど、結婚しよう。愛してる。これからもずっと愛してる。一生かけて守ります」K助のプロポーズはいつも同じ台詞でした。4年間、何度も何度も聞いた台詞です。聞くたびにその言葉の重さが重くなっていくように感じていました。
結局、そのときのプロポーズはいつものように笑って流したのですが、私は心ひそかに「K助が次にプロポーズをしてくれたときは、受け入れよう!」と決めました。
またプロポーズしてくれるって疑ってなかったんですね。今思うとちょっと馬鹿みたいですが、 それだけ自分たちの愛情を信じきっていました。
それは突然やってきました。
ある日の朝、いつものように仕事に出ようと一人暮らしのアパートの部屋を出ると、ドアの取っ手の部分に覚えのない白いビニール袋がぶらさがっていました。
回覧板?いや、そんなもの一度も回ってきたことないし…。大家さんから届けものかな?いやいy(ry
何せ初めてのことだったので不気味に思いましたが、とりあえず中を確認しないことには対処のしようがありません。
そっとビニール袋を取り上げ、手元に持ってきた瞬間、鼻をつく強烈な悪臭が。腐った水のような、それでいてどこか生臭いような臭いでした。恐る恐るビニールの持ち手の結び目を解くと、
その臭いはより強力になり、目に涙が浮かぶのがわかりました。
それでもなんとか中身を確認しようと袋を覗いた私の目に飛び込んできたのは、小さめの赤黒い物体。ぐちゃぐちゃにつぶされた動物の死骸でした。あまりよく見なかったのではっきりとはわからないのですが、おそらくネズミか何かだったと思います。
袋の側面にこびりついた汚れがその動物の目玉であると認識した瞬間、私は悲鳴をあげて
その袋をほうり捨ててしまいました。
どうやって会社に行ったのか思い出せません。会社へつくと、私の顔を見た人は皆「どうしたの?」と聞いてきました。
ひどい顔色だったようです。
実際、その日は仕事にならず、生きた心地がしませんでした。パソコンの画面を眺めているときも、お昼ごはんを食べているときも、同僚と仕事の話をしているときも、常に頭の中では今朝見たぐちゃぐちゃの動物の死骸と、「なんで私に?誰が?どうして?」という言葉がぐるぐる回っていました。
休み時間、たえきれずK助に電話でその話をしました。動揺しまくっている私の話を聞いた彼はとても心配し、帰り道は迎えにきてくれました。アパートに着くと、ビニール袋は今朝私が捨てたままの形でそこにあり、結局、その死骸は彼が埋めてくれて、その日は彼と一緒に眠りました。
心当たりはないけれど、誰かの恨みを買ったのかもしれないと怯える私を、K助は辛抱強く慰めてくれました。「もう大丈夫だよ」「俺が守るから」と何度も繰り返し、その言葉を聞いて、私もようやく眠りにつくことができたのです。
そしてその日から、正体不明の嫌がらせはどんどんエスカレートしていきました。毎日のように郵便受けに届けられる「死ね」とだけ書かれた手紙、きっちり3日置きにドアにぶらさがっている動物の死骸入りのビニール袋、1日100件を超える非通知電話。
非通知電話を着信拒否すると、今度は夜中に部屋の前にやってくるようになりました。毎晩深夜2時にやってきて、きっちり10分間、チャイムを押したりドアをたたき続けたり、体当たり?をしたり。
怖くて怖くて、ドアを開けて直接犯人と対峙することなんてとても出来ませんでした。はい、チキンです。ごめんなさい。
しばらくはK助や友達の家に避難したり、逆にK助に泊まりにきてもらったりして過ごしました。とにかく1人でいることが怖くてたまりませんでした。どこにいても誰かに見られているような気がしたし、誰と話していても誰かに聞かれているような気がしました。
そんな私をK助は必死で支えてくれて、出来るだけ一緒にいる時間を作ってくれていました。
最も恐れていたことが起きてしまいました。
「そいつ」は、友達の家にもやってきたのです。
深夜2時ちょうどに鳴りだしたチャイムは、最初はゆっくり、だんだんと激しく、最後には狂ったように鳴り続け、そしてぴったり10分後、嘘のように大人しくなりました。その10分間は私も友達も一言も喋らず、ただ黙って入口のドアを見続けていました。
私は限界に近づいていました。死にそうなほどの恐怖を感じていましたが、ここに至ってようやく、激しい怒りも覚えるようになっていました。
迷惑をかけた友達やK助に申し訳なく、また、私ばかりでなく周りの人にまで危害を与えた犯人が憎くてたまりませんでした。
嫌がらせを受けるようになってからずっと、私はこれまでの自分の行いを必死で思い返していたのですが、どれだけ考えても、これほど陰湿で激しい嫌がらせを受ける原因に思い当たらず、またたとえ自分の気付かないうちに原因を作っていたのだとしても、その報復にこんな陰湿な手を使う知り合いなど心当たりがありませんでした。
思い詰めた私はどんどんやつれていき、結果としてK助や友達にもさらに心配をかけてしまうことになりました。完全に悪循環にはまってしまっていたのです。
彼は私のやつれように驚き(ストレスと疲労で、この頃は正直人相が変わっていたと思います)、何があったのかと私に尋ねました。Y太はK助の友達でもあり、信頼の置ける仲だったので、私はこれまでのことをすべて吐き出しました。
ある日突然、前触れもなく始まった陰湿な嫌がらせの数々。仕事を切り詰め、寝る時間を犠牲にしてまで一緒についていてくれるK助への感謝、心配してくれたのに迷惑をかけてしまった友達への罪悪感、原因も、犯人の正体もまったくわからないことへの恐怖、まともに生活を送れない不安、犯人への怒り…。
話していくうちに泣きそうになってしまい、さぞや聞き苦しい説明だったと思うのですが、Y太は質問を挟みながら辛抱強く付き合ってくれました。
そしてなんとか最後まで話しきり、「自分のためにも周りの人のためにも、いいかげんどうにかしたい。ただ、犯人の見当や目的がわからないうちから直接対決するのは正直怖いし余計こじれてしまいそう。とにかく、まずは犯人の目的が知りたい」と言いました。
私は最近携帯を買い換え、それに伴って電話帳の整理をしたので、私の番号を知っているのは仕事関係の人たちか、比較的少数の友人たち、親族のみ。
それなのに犯人は私の連絡先を知っていました。
しかし、新しい番号を知っている人たちの中に、直接怪しいと思える人はいません。毎日のように深夜私の部屋までやってきて、嫌がらせをするほど暇な人はいないはずです。
ということは、犯人は私のごく近しい人から私の情報を引き出せる人、という可能性が出てきます。
さらに、ここまできても犯人の目的がわからないのも謎でした。私に要求や恨みがあるのなら、そして私を屈服させたり過去を後悔させたいのなら、これまでの嫌がらせの中でそのヒントとなるようなものがあってもいいのではないか?と思いました。
犯人がわからず、疑心暗鬼に陥っていた私は、万一友達に危害が及ぶのを恐れて、その日その友達の家に行くことを誰にも話しませんでした。
K助にすら、どの友達かは教えない(電話機の盗聴も疑っていたので)でいたのです。それなのにその日、犯人はやってきてしまいました。
ということは、犯人は私を会社から尾行していたか、盗聴して知った「私の友達」というキーワードから、どの友達か見当がつくほど私の情報を持っているということです。そして私は、前者の尾行は可能性として低いと考えていました。
もし会社から尾行していた=私の会社を知っていたなら、何らかの形で会社での私の立場を悪くするようアクションを起こしていそうなものですが、これまでのところ会社での仕事に影響が出るようなことは起きていません。ということはつまり、犯人は私の会社を知らないか、知っていたとしても会社に直接アクションを起こしたくないあるいは起こせない…?
いろいろと不可解な点は多いですが、だいたいそのような感じで推測しました(ちなみに実際はこの時点でこんなに考えがまとまっていたわけではありませんwY太の協力と誘導で、自分の中の疑問を徐々に整理していった感じです)
何が「わかった」なのかわからず、困惑していると、Y太は「また連絡するから。今日俺に会ったことは絶対に誰にも言うな」とだけ言って席を立ちました。
私は何が何だかわからず、呆然とY太の後ろ姿を見送りました。
そして、その日から3日と待たず、およそ2ヶ月にわたった嫌がらせがぴたりとやみました。始まりも突然なら終わりもまた突然でした。
K助は手放しに喜び、「辛かったな」と私を抱きしめ、まだ不安そうな顔をしている私に「また何があっても俺が守るから」と言ってくれました。
この嫌がらせは、K助の浮気相手が彼女である私を逆恨みしてやっているのだろうと。私はK助に裏切られたのかもしれないと。
しかし、嫌がらせの中でK助との別れを要求するような内容のものはありませんでしたし、何よりこの2ヶ月間、K助は怯える私のために必死で仕事を早く終わらせ、毎日のように私といる時間を作って、なかなか寝付けない私が寝るまで優しい言葉をかけてくれました。
K助の抱える疲労とストレスも、私に負けず劣らず重いものだったはずです。
辛い2ヶ月ではありましたが、私たちは別れるどころか、より愛情と信頼を深めたように思えました。実際この頃には、私はK助と早く結婚したいとまで思うようになっていたのです。
実はこの1週間、Y太に連絡をとろうと(このタイミングで嫌がらせがやんだのは、Y太が関係しているだろうと思ったので)していたのですが、何度電話やメールをしても、Y太には繋がりませんでした。
久しぶりに連絡をくれたY太は、開口一番「この前話した件で話がある。明日の○時に~~へ来てくれ」と言いました。それ以外はなんの説明もなく、私は突然のことに少々驚いてしまったのですが、嫌がらせの件と言われれば行くしかありません。
次の日、仕事を終えた私はY太に指定されたお店へ向かいました。
先に着いていたY太の隣にら、若い女の子が座っていました。
私よりも少し年下でしょう。私は咄嗟に「この子が犯人なんだ」と思い、記憶を探ってみたのですが、どう考えても見たことがない子です。
その子は泣いていたようで、お化粧が落ちてどろどろになっていました。それでも紛うことのない美人さんです。「何でこんな子が…」と私は余計に混乱してしまいました。
Y太は私が席につくと、私が何も言わないうちからがばっと頭を下げ、「すまん!!」と叫びました。
急いでまとめ直すので少しお待ちください!
せっかく支援してくださってるのにすみません!m(__)m
まだ最後までまとめきってないのですが続きです。
周りの客が振り向くのも構わず、頭を下げ続けるY太。
そんなY太を見て泣き出す女の子。
わけがわからずひたすら「いや、顔あげてください」とわたわたするだけの私。Y太がなかなか顔を上げてくれないので、困ってしまい女の子のほうを見ると、(このとき初めてまともに目が合いました)
女の子が「こっち見るんじゃねーよ!」と泣きながら叫び、テーブルに身を乗り出して私の髪を掴んで引っ張りました。
「誰のせいでお兄ちゃんが頭下げてると思ってんのよ!!」ぎゃーぎゃーわめきながら私の顔を引っかこうとする女の子。
Y太が慌てて「お前のせいだろ!!やめろ!」と私から女の子を引き剥がしてくれましたが、 マニキュアで加工された長い爪で力一杯引っ掛かれた私の顔からは、だらだらと血が流れていました。痛いという感覚もあるにはあったのですが、それよりも今目の前で起こっている出来事が現実のこととは思えず、そして何よりそんな出来事に自分も巻き込まれていることが
信じられず、私は呆然としていました。
取り押さえられた女の子はなおも叫び続け、テーブルに置いてあったコップやらフォークやらナイフやらを投げつけてきます。
店員が不安そうに、でも忌々しそうにこちらのテーブルの様子を伺っているのがわかりました。こんな状況に置かれていることが怖くて情けなくて悲しくて、思わず泣けてきましたがなんとかこらえました。
まず、この女の子はI子といい、Y太の妹であること。
事の発端は嫌がらせが始まるはるか前、1年前にY太がK助に、妹としてI子を紹介したことから始まっていたのです。
K助はI子と浮気をしていました。
私という彼女がいること、将来結婚したいと考えていることを話した上での関係だったそうです。
K助と付き合い始めた当初はI子にも彼氏がおり、お互い割り切った関係だったのだそう。しかし、彼氏とも別れ、フリーになったI子は次第にK助に本気になっていきました。
そしていつものように秘密の逢瀬をしていたある日、K助はI子にあるお願いを切り出します。曰く、「俺のプロポーズに協力してほしい」と。
私に対する嫌がらせは、K助からの提案から始まったことでした。
K助のことが好きで、でもK助に自分だけが本気になってしまったことを知られたくないI子は、私への嫉妬に燃えながら私への嫌がらせを始めたそうです。
私のアパートの場所を教えたのも、私の新しい携帯電話の番号を教えたのも、私が友達の家へ避難していることを教えたのも、すべてK助でした。
呆れたのは、私がどの友達の家へ避難しているかわからなかったK助は、いくつか目星をつけてI子に教え、「当たり」を見つけるまで私の友達の家をまわらせたということ。
深夜に、知らない道を、若い女の子1人で。
「2時に間に合わせろよ」と注文までつけて。
深夜に鳴るチャイムに怯える私のために、よく泊まりにきてくれたK助。
彼は車で来るので、チャイムを鳴らしに来たI子も、自分が脅しているその部屋に、K助がいたことには気付いていたはずです。
白々しく私を抱きしめ慰めるK助を思い、I子はどんな気持ちでドアを叩いていたのでしょう。
私は哀れでなりませんでした。
こんな酷いことをされながら、まだ私への嫉妬で私を睨み付けてくる目の前の女の子も、黒幕である男に縋って支えられて、あまつさえまんまと策略にひっかかり、結婚まで考えていた自分も。
黙りこくる私に、一度は大人しくなったI子がまた叫びだしました。
「あんたのせいで」「あんたがいなければ」
私はまた顔なり手なりを力一杯引っ掛かれたのですが、やっぱり痛みは感じませんでした。主役不在のまま、人生初の私の修羅場は過ぎていきました。K助が憎かった。
I子はまだ泣いていて、Y太はひたすら謝っていました。
その帰り道、私はK助に電話をして、次の日に会う約束を取り付けました。「大事な話があるの」と、明るい声で言ったせいか、K助は何か都合のいい勘違いをしたようです。それでもいいやと思いました。
もうどうだっていいや。そんな感じでした。
そして次の日、K助を呼び出したレストランで、私はK助にプロポーズをされました。
この4年間、もう何度も聞いたあの台詞です。
「結婚しよう。愛してる。これからもずっと、お前を愛してる。俺がお前を一生守るから」K助を愛していました。K助も私を愛してくれていて、いつかは2人で新しい家庭を作るんだと考えていました。
クリスマスにプロポーズをされたときは、次にプロポーズをされるときこんなことになってるなんて、考えもしなかったのに。
私はにっこり笑ったつもりでしたが、うまく笑えませんでした。
咳をしようと思ったら、口から出たのは泣き声でした。
泣き出した私をK助はどう解釈したのか、「この2ヶ月くらい、お互いに辛かったと思うけど、俺の覚悟はわかってくれたと思う。この先何があっても、俺がお前を守る」K助が言い終わった瞬間、私は彼の顔を思いっきりはたきました。
K助が驚いたようすでこちらを見ているのを無視して、私は店を出ました。店の外には、事前に打ち合わせた通りY太がI子を連れて待っていました。
また頭を下げるY太。しょぼくれた顔のI子。
K助が私を追い掛けて外に出てきて、私たち3人の顔を見て唖然とし、そしてすべてを悟ったのか急速に青ざめました。
「K助さん」と呼び掛けるI子を無視してK助は私に向かい、「違うんだ」と叫びだします。
「話を聞いてくれ」
「こいつが勝手にやったことなんだ!」
I子は泣き出し、Y太はK助に殴りかかります。
K助はY太に殴られながらも、「違う」と狂ったように叫んでいました。
私はその様子を、何をするでもなくただ眺めていました。
私の4年間って、こんなものだったんだ、とだけぼんやりと考えていた気がします。
Y太に胸ぐらを掴まれているK助に、「4年間ありがとう。もうあなたの声も聞きたくないです。さよなら」とだけ言いました。誰かが何か言った気がしましたが、何も聞かなかったことにしてそのまま1人で帰りました。
涙も出ませんでした。
ただ喪失感だけが私を支配していました。
以上、1年前の出来事です。
長い上に大した修羅場にならなくてすみません…。
支援ありがとうございました!
お疲れさま。
今は幸せですか?
>>702に幸せが訪れることを呪っておくよ。
読み返してみたらなんだかやたら無駄な部分が多いですね(;´Д`)できの悪い小説みたいな語り口は昔からなので許してください…
今は、残念ながら恋人はいませんw
久々にカップル板にやってきたので投下しました。お目汚し失礼しました。
治る前から化粧してた(K助と会うときも)ので多少完治は遅れたのですが、今は傷も残っていません。
修羅場後はお決まりにのK助ストーカー化→警察出動です…
もうお腹いっぱいの展開かと思ったので割愛させていただきました。
I子がY太に見張られててその後直接は姿を見せなかったので、修羅場ともずれますし。
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